六十八章 南へ向かって

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   リューティスはじっと馬を見つめた。どちらも騎士が乗るような足の速い品種の馬ではなく、とにかく身体が丈夫な品種の馬だ。  リューティスが視線を合わせると、鹿毛の馬は怯えたように目をそらした。もう一頭の芦毛の馬はじっと見つめ返してくる。 「……こっちにするよ」  リューティスは芦毛の馬の手綱を手にした。リューティスに怯えている鹿毛の馬に乗っては、あの馬が可哀想だ。 「そうか。それで、だ」  シルウィは少年たちに目を向けた。四人いる少年たちは皆、顔立ちにまだ幼さを残している。 「リュース、こいつらはこの街生まれの餓鬼だ。冒険者としてこれから旅をする予定らしい」  彼らが身に付けているのは、あまり汚れの目立たない革製の防具と武器。駆け出しの冒険者とわかる姿だ。 「全員Dランクに上がりたての、まだ駆け出しだ。迷惑をかけるかもしれんが、よろしく頼む」 「うん」  少年たちはやや緊張した面持ちでこちらを見ていた。 「順番に自己紹介しろよ」  シルウィに促されて、一人の少年が歩み出る。 「ツェン、だ。この中では一番年長で今年で十四歳になる。よろしく」  褐色の髪を短く刈り上げ、同色の瞳を持つこの少年は、少年たちの中で二番目に背が高い。腰には剣を下げている。 「え、えっと、ネルです。歳は十三歳で、ちょっとだけ魔法が使えます。よろしくお願いします」  二番目に歩み出たのは、一番背の高い少年だ。しかし、彼でもリューティスより頭一つ分小さい。髪は鮮やかな青色で、瞳の色は紫である。その色合いと魔力からして、属性は水であろうか。槍を手にしており、武器と魔法を併用して戦うのだろう。 .
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