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もうこれで何回目だろうか。数える事も億劫になる程、長すぎる年月が過ぎた。
“私”が回数を尋ねると、傍らで今日の献立を考えていた娘が答えた。相変わらずの淡白な話し方で。
「今回が、わたしが生まれて76510回目になります」
「そうか」と相槌を打つ。そこで、ふと気づいた。
「今回が76510回目なのか」
娘は「はい」と小さく頷いた。
ふふ、と思わず笑みが零れた。“過去の私達”のメッセージが正しければ、きっとこれが私にとっての最後のチャンスだろう。
「いいか、ココット」
私は娘の頭を出来るだけ優しく撫でた。こうしてやれるのも、上手くいけば今回が最後になるだろう。そう思うと、少し声が震えてしまった。
平常心を装い、私は言葉を続ける。
「きっと……恐らく、これが最後になる。私はまた、すぐ脱落するだろう。だから――頼んだぞ」
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