希望と絶望

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「すぐに板丸と西山を救護所へ送るよ。」 「あぁ、頼む。」 「ちょっと待ちなさいよ!私も職員室へ飛ばしてよ!」 横から割り込む高い声。 見ると不機嫌そうな咲田が仁王立ちしている。 そういえば、板丸の黒箱に閉じ込められてたんだったな… 目まぐるしく変わる戦況に精一杯で、忘れていたが。 「すまんな、咲田。咲田は救護所で西山の手伝いをしてくれないか?」 俺からの提案に眉間に皺がよる。 「なんであんたなんかの命令を…」 「まぁまぁ、いいじゃないか。」 西山の説得により、渋々承諾する咲田。 全く骨が折れる。 「能力起動(アビリティ・オン)」 能力を起動して三人を転送する。 消失する三人の影。 残る組長は一人。 そいつを倒せば戦いは終わる。 工藤のところにも援軍を送れる。 だが、ここからが正念場。 天示の能力の詳細が不明な以上、慎重に戦略を練らなければならない。 何せ奴は… その刹那、鋭い殺気を感じた。 「グォォォォォォォォォォォォン!」 突如として、耳をつんざく轟音。 続いて女子らしき悲鳴も後から混じる。 まさか…! 蘇る、消失した屋上。 また奴が能力を行使したのか…? 音源の方を向く。 濛々と立ち上る土煙。 あの方向は…北校舎だ。 遠方な上、視界が悪く、状況が確認できない。 取り敢えず、何かまずいことが起こったのは間違いなさそうだ。 胸騒ぎがする… 事態は一刻を争うように思えた。 迷わず職員室へと移動する。 「何があったんだ!?」 職員室に着くと、蒲田が唖然とした表情でパソコンの画面を眺めていた。 恐怖に顔が固まっている一同。 「何かあったんだな。」 声のトーンを落として蒲田に状況を尋ねる。 すると、蒲田はこちらに気づいたのか、回転椅子をこちらに向けた。 緊張した顔つきだ。 「ついに天示オウヤが動き出した。なかなかヤバいね、今さっき、北校舎が崩壊したよ。」
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