エピローグ

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わたしの体調の変化にいちばんに気付いたのは、なんと雪菜ちゃんだった。 本人よりも先に察するなんて、彼女の勘の良さは一つの才能だと思う。 そして、異動してからほとんど顔を合わせていなかったにもかかわらず、もしかしたらと勘付いた楠木くんはもっとすごい。 雪菜ちゃんのわたしに対する接し方の変化を見てピンときたらしい。 『今すぐ電話しろ。向こうの状況なんか気にしてる場合じゃねえだろ』 仕事が落ち着いてから伝えた方がいいのではないかとか、直接顔を見て伝えるべきなんじゃないかとか、余計なことを考えて宇佐美くんへの報告を躊躇していたわたしを、楠木くんは一喝した。 『電話だってメールだってなんだっていいんだよ。 そんな最高の話、父親に一番に伝えてやらなきゃダメだろ。 俺たちが先に知ったことは黙っててやるから』 その夜、迷いながらも思い切って電話で伝えた。 電話口で泣きだした宇佐美くんにつられ、わたしも泣いた。 今すぐ会いに行くと言い出した彼を止めるのにはかなり苦労したけれど、早目に報告してよかったと、心から思った。
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