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気づけば窓の外はもう暗くなっており、わたしは少し慌てた。
さっさと机上の教科書を集め、鞄に入れて帰る支度をする。
ふと、教室を見渡せばもう一人机に付して寝ている人がいる。
『矢田…』
あまり話しかけたくはないが、もう間も無く下校時間が来てしまう。
別にわたしが起こす必要もないのだが、下校時間を過ぎて誰もいない教室で目を覚ます …
あのなんとも言えない虚しさを知っているので、起こさないことに罪悪感を感じる。
…仕方がない。
『矢田、矢田。起きて。
もうそろそろで下校時間来るよ。』
「うぅー」
『うー、じゃない。ほら、早く起きて』
なかなか起きない。
なんか腹立ってきた。
『起きないと置いていく。因みに下校時間まであと7分。
気付いたら周りが真っ暗なんだ。いいの?
…ほんとに行くから!』
もういい。できる限りのことはした。
さっさと帰って寝よう。
すると、後ろからバタバタと慌てる音がした。
『あっ、起きた。』
「うっわー、今何時?外暗い。」
『もうすぐで下校時間。』
「マジか。」
などと話しながらも二人は歩く。
それにしても…
めずらしい
わたしよりもきちんとしている矢田がこんな時間まで寝こけるなんて、疲れているのだろうか。
…まぁ、わたしには関係ない。
「なんか、こうして話すのも久しぶりだね。同じクラスなのに。」
『うん。』
「昔はさ、よく一緒に帰ったよね。懐かしいなー。」
『うん。』
沈黙が続く。矢田はその沈黙を破りたくて仕方がないらしい。
「ねぇ、桜ちゃん…」
『じゃあ、わたしこっちだから。』
「え、桜ちゃんその道だったっけ?」
『うん、今日はこっち。じゃあね。』
矢田の方を振り返らないように歩く。
やっと別れてホッとした。
それと同時に後悔やなんやら複雑な感情が溢れてきた。
…一旦心を落ち着けたい。
わたしは小さな公園に寄り、ぼぅっと空をみた。
そして、思い出したくもない記憶を蘇らせてしまった。
昔の矢田とその矢田が好きだったわたしのこと…
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