第1章

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「君、本当は生魂でしょ?」 下手に反応してはいけない。ばれてしまう。何のこと?と、手話で返す。 コツンコツン、と彼が音を立てて近寄る。身体が動かなかった。彼の手が僕の胸に触れる。 「正解でしょ?心臓、ドキドキしてるよ」 違う、違う。今まで僕の正体が完璧にばれたことはなかった。目を見られて、気味悪がられてそれだけだったのに。 「やっと…見つけた…」 不意に、彼の目から涙が零れた。何故泣いているんだろう。 「ずっと探してたんだ…俺のパートナー…」 胸に置いてあった手が、僕の眼帯をした目に被さる。同時に、激しい痛みが目を襲う。 「う゛ぁ、あっ…」 磁石の様に彼の手から目が離れない。離そうとしても離れない。我慢していた声も、その痛みに勝てずに出てしまう。頭の中を、走馬灯の様に彼の光景が駆け巡る。僕の仲間だと伝える様に、駆け巡る。 「あ゛っ…あ゛…」 痛みに耐えきれず、僕はそのまま気を失った。
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