第1章

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ゆうりside 担任の上松です。よろしく。手を動かして僕にそう伝えてくる先生。 ポケットから単語帳を取り出し、ペラペラと何回か捲って先生に差し出す。何十回としてきたこのやり取り。 「口の動きで何を言っているかわかりますから手話は大丈夫です…か」 わかった、と、僕に単語帳を返してこっちだと案内する担任。教室に行くまでに校舎内を説明してくれた。別に良いのに…どうせまたすぐばれて居なくなるんだから… 「おーい席つけー」 ガラガラとドアを開いた先生はパンパンと手を叩いて生徒たちにそう促す。余談が終わったら呼んでくれるだろうと、僕は廊下の窓から外を眺める。何でか分からない。僕が転校する日はいつも雨だった。 そろそろ終わった頃かと振り返ると、ちょうど良く先生と目が合った。おいで、とこちらに手を振った。 「今日から君たちの仲間になる子を紹介します。ゆうりくんです。ゆうりくんは耳も聞こえなくて話すことも出来ないから、皆はメモとかに書いて話してな」 そんなの嘘だった。声も出るし、耳だって普通に聞こえる。無駄な話をしたくない、そう思って声も出ない、耳も聞こえない事にした。 「ゆうりくんは眼帯くんの横の席な」 眼帯くん…どこかと見たが、白い眼帯がすぐに目に止まりあの人だと分かった。 「眼帯くんも君と同じ。片目も見えないし声も出ないし耳も聞こえないんだ。明るい子だからきっと、仲良くなれるよ」 片目が見えなくて耳も聞こえなくて声も出ない?似すぎではないか?不思議に思いながら彼を見ると、彼はふにゃんと笑って軽く頭を下げた。
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