act.5 カプリチオ

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「動かないでね?」 艶やかな声と共に、喉元にヒヤリとした感触が走る。 その冷たい感触に――息を飲む。 喉元にナイフがあてがわれている――。 「怪我はしたくないでしょう? 私もね、綺麗な子に傷はつけたくないの」 喉元から。 そっとなぞるように、ナイフの先を移動させていく。 ブッという細い糸の切れる音――。 身体が強ばる。 ナイフでボタンを切り離しているのがわかる。 「……やめて!!」 逃れようと動くと、両の手首を捕まれ、頭の上で押さえつけられた。 同じように、足も押さえつけられ――。 顔もわからない――。性別も定かでない集団に取り囲まれ、押さえつけられ――。 その中で千冬がナイフを動かし、服を裂いていく音と無数の息づかい、グレゴリオの音楽が私を包み込む。
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