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「動かないでね?」
艶やかな声と共に、喉元にヒヤリとした感触が走る。
その冷たい感触に――息を飲む。
喉元にナイフがあてがわれている――。
「怪我はしたくないでしょう? 私もね、綺麗な子に傷はつけたくないの」
喉元から。
そっとなぞるように、ナイフの先を移動させていく。
ブッという細い糸の切れる音――。
身体が強ばる。
ナイフでボタンを切り離しているのがわかる。
「……やめて!!」
逃れようと動くと、両の手首を捕まれ、頭の上で押さえつけられた。
同じように、足も押さえつけられ――。
顔もわからない――。性別も定かでない集団に取り囲まれ、押さえつけられ――。
その中で千冬がナイフを動かし、服を裂いていく音と無数の息づかい、グレゴリオの音楽が私を包み込む。
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