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多笑は気を抜くと、込み上げてきてしまいそうな笑みを噛み殺し、顔の中に無理矢理渋面を作った。
「あんたな、多笑ちゃんって呼ぶんやめえな」
ちっとも嫌じゃないが、言った。
ちゃん付けを嫌がるどころか、多笑は喜んでいる。
歳下の可愛い悪童。あぁ、厄介だ。
「あたしの方が歳上やねやから、せめて多笑さんって言いや。礼儀、知っとぉか」
「なんでえな」と暴馬が椅子から、立ち上がった。
暴馬の身長は162センチで、164センチの多笑より2センチ低い。
暴馬が腰を動かし、
「水臭い事言いなや。俺と多笑ちゃんはズボズボの関係やんか」
と笑顔で言った。
「こらぁ!」と、多笑は思わず叫んだ。
3席あるテーブル席に着いている客達が顔を上げ、驚いた表情をカウンターに向けている。
多笑はテーブル席に向いて愛想笑いを浮かべ、頭を下げた。
「とにかく、一回座り」多笑は険しい眼差しで暴馬を射抜き、1段声を落として言った。
暴馬は、にこにこしたまま席に座った。
「あたしらの事は誰にも内緒やて約束やん。
頼むわ、ホンマ。
14歳の子ぉ相手にそんな事しとぉなんかバレたら、もぉあたし切腹もんやで、ホンマ」
「わかっとぉ」
暴馬が言ってジンジャーエールを飲んだ。「ここのお好み焼きも多笑ちゃんの事も大好きやから約束は守るで、俺」
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