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真田主任は呆れた声を出して元カレに詰め寄った。
「そんなアホらしい理由で、付き合ったり別れたりしてんの?くだらな過ぎ」
「はぁ!?」
「不誠実極まりない。
千鶴子、こんなヤツの話聞く価値もないよ。
行こう」
不機嫌に顔を歪めた元カレをスルーして、真田主任は私の腕を掴んで歩き出す。
でも、それを引き留めるように元カレが声を荒げた。
「待てよ!千鶴子は置いて行け。
お前こそ、さっきの女とどっかいけばいいだろう!」
………そうだ。
さっきの女性はどうしたんだろう。
不安な気持ちで真田主任を斜め下から見上げた。
「さっきの女………?
あぁ、ちゃんと『俺には好きな人がいるから付き合えません』って振ってきましたよ。
アンタみたいに両天秤かけるような趣味は持ち合わせてないんで」
「千鶴子の前じゃそうカッコ付けてるけど、本当は陰でこそこそ会う約束でもしたんだろ!?」
「………アホらし。
俺をアンタと同じ低俗な人間扱いにしないでください。
俺は千鶴子が一人いれば十分なんで。
そもそも、さっきの女性だって全然興味ないんです。
俺は千鶴子じゃないとダメだから。
こっちがダメだからあっちとか、アンタ、思考がまんま子供っすね」
「はぁ!?お前、いい加減にしろよっ!?」
冷静な真田主任の表情とは対照的に、元カレの顔が怒りで真っ赤になる。
一色触発状態に私は焦った。
「────あ、あなたとはやり直しませんっ!!!」
真田主任に腕を掴まれたまま元カレの方を向き、そう言い放った。
グッと元カレの表情が歪んだけど、もう可哀想とも思えなかった。
「私を振ってくれてありがとう!」
思いきり笑顔でそう伝えると、今度は私が真田主任の腕を掴んで歩き始めた。
何か言いたげに元カレがたじろいだけど………
もう、私は後ろを振り返ることなんかしない。
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