闘技大会の書

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「こっちの方が性に合ってるわ」 空気を斬るように剣を振るうと、口角を上げて微笑んだ。 貴族であるレイナの家では代々レイピアを使っていたからこそ、レイナを知る者は驚いていた。 「アンタ、それ…」 「あぁ、別に双剣じゃなくてもいいの。弓でもハンマーでも斧でも銃でも…どれでも私は使えるから。」 「なっ…」 鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして、ワナワナと震え始めるクラーレ。 圧倒的な実力差を見せつけられている気がした。クラーレの調べによれば、レイナは光以外の基本属性は使えるというし、それに加えて武器も豊富に取り扱える。 「だからって、負けるわけにはいかない…」 ギリ、と奥歯を噛み締め戦闘体勢をとる。それに対してレイナは歯を見せ一瞬笑った後、光の如く駆け出した。 勝負は一瞬だった。 長い髪を靡かせ、軽い身のこなしでクルリとツルを避けつつ、剣を振るい斬っていく。 向かってくるツルに乗って駆け上がりクラーレに近づいた。そして剣を振るわずに姿勢を低くして肘を鳩尾に入れた。 「っが、ぁ…っ」 「勝負はついたわね。」 「…っ、く」 起き上がれないようクラーレの胸に右足を乗せ顔を近づけ、首の横に右手に握っている剣を刺した。
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