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「何を考えているんだあの勇者は…」
「俺たちの知らない何かを知っている、或いは全く何も知らないかのどちらかだろうな。」
「俺たちの知らない何かがあると?」
聞き返すと、男性は肩を竦(すく)めた。
「別に俺たちが絶対じゃないしな。ないとも限らん。」
だが、とすぐに男性は付け加える。
「今回の勇者に至っては後者だろうな。」
それを聞いて父親の顔色が更に悪くなる。
「仕方ない。せめて付近の住民をこの屋敷に…」
言いかけて、言葉を止める。
「どうした?」
「いや、大勢の人を集めてしまってはもし何かあったとき…」
「考えすぎだ。お前の判断は正しい。」
「だが…」
「バラバラのままだと確実に全員死ぬぞ。なら固まって可能性を少しでも広げるべきだ。」
苦い表情をしつつも、父親は決心する。
「わかった。付近の住民をできるだけ急いでこの屋敷に集めてくれ。頼めるか?」
「何年の付き合いだと思ってる。任せろ。」
そう言って男性は部屋を出て行った。
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