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長いストレートの髪をひとつに束ねたその人は、去年も合宿に来たことのある人だと思う。
その頃はもっと髪が短かったから、雰囲気がずいぶん違って見えるけど、確か演劇部のOBの先輩。
「あ、佐野さんだよね。おはよう。今年もよろしくね」
「あ、はい...よろしくお願いします」
「マリ~コ、紡のこと知ってんの?」
「え?だって私演劇部OBだよ?去年も参加してるから、佐野さんの事は知ってるわよ」
そうだ、マリコ先輩だ。
優しいけど、すごく厳しくて数人の部員が泣いてたっけ...
「エイル、先輩と知り合い?」
私はこそっとエイルの服をつまんで訊ねた。
エイルはニコッと笑って
「俺とマリ~コ、高校3年間同じクラスだったんだよ」
って教えてくれた。
「そうだよね。3年間も同じだなんて周りにはいなかったよね」
「そうだよなっ!腐れ縁ってこういうことなんだろね」
楽しそうに話す二人。
私はその話には入れなくて、ゆっくりその場から離れて、ほかの部員の輪に入って行った。
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