二月十六日

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十八歳になったら結婚しようと子供の頃に何故かそう幼馴染みに宣言していた。といっても当時小学生だった俺の一世一代の告白は緊張と不安に揺れ動きそれに合わせて身体も震え、顔が赤くなるどころか逆に青色に染まり、申し込んだ相手にキモいと笑い飛ばされてしまったのだから笑えない。おそらく相手は冗談だと思い込んでいるのか或いは忘れてしまっているのかもしれないなぁとひとりぼんやりと思う。 今日はバレンタインデーだった。俺の通う学校だけがバレンタインデーだった。世間では二日前に終わった行事だが二月十四日が土曜日だった為、学生は二日遅れでバレンタインを実施している。二月十三日の金曜日に持ってくるという手もあったが、なんせ十三日の金曜日だ。甘いイベントが血のイベントに変わってしまっては縁起でもないということで二日遅れのバレンタインだった。正直の話、貰えない組はどれだけ日にちをずらしたところで貰える組を妬むし、これを切っ掛けに彼女が出来たと宣うのなら団結して殺害する所存なのだがそれを言うときりがないうえこの日を待ち望んでいた女子に抹殺されるのは目に見えている。 幼馴染みを待っていた。まだ賑わいを見せる教室の窓際で外の風景を眺めながら幼馴染みの帰りを待っていた。クラスの委員長である彼女はSHRが終わるや否や担任の教師の後を追うようにどこかへ行ってしまった。昨日の夜、夜更かししちゃったとか緊張するーとか言っていたからおそらく━━いや、百%坂口(さかぐち)にチョコを渡しに行ったのだろう。本命か義理かなんて幼馴染みの普段の言動や行動を見ていれば嫌でも分かってしまう。っていうか相談されてしまったし。 俺━━葉月鈴(はづきりん)は幼馴染みでありお隣さんである安西凛(あんざいりん)のことが好きだった。驚くことに小学二年から高校三年の現代まで片想い続行中である。我ながら気持ち悪いとは思うが、好きなのだから仕方がない。彼女が望むことすべてを叶えてあげてもいいと思えるくらい好きだ。嘘だ。思うだけで実行に移すつもりはないけど、それくらい好きだとは言えた。勿論、本人には言ってない。
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