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修一が、こちらに向かって歩いてくる。修一の姿を捉えた俺の心臓は、今にも張り裂けそうな程脈打っていた
どうしよう。動けない
短い廊下、どんどん近付く距離、後ろには玄関のドア。逃げ場なんてどこにもない
ああ、そうだ。何か、何か言わないと
自分の心に急かされる様に、俺は修一にかける言葉を探した。さっきまであんなに考えてたのに、修一の姿を見た瞬間全部吹き飛んでしまった
「あ、あの、えっと、ただいま」
咄嗟に口から溢れたのは、ただいまだった。この時既に、俺と修一との距離は僅か15cm。その距離に気付く前に、俺の退路は絶たれた
「昨日はーー」
「……がう」
「え……?」
「洋服が、違う」
その言葉を聞いた刹那、俺を襲う強い衝撃。ゴンッという鈍い音が玄関に響き、背中に強烈な痛みが走る。反射的に瞑った目を開けると、真っ先に映ったのは修一の長い睫毛
何が、起こってる?
「痛っ……なにっ……ん、ぐっ……!」
俺の腕は両腕ともがっちりと握られ、玄関のドアに押さえ付けられてる。足の間に無理矢理足を割り込まれ、身体を密着されて身動きすらも取れない
いや、それよりも
なんで俺、キス、されてるんだ
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