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ストーリー
俺、上島 悟理(うえしま さとり)と宮路 修一(みやじ しゅういち)の間には一定の距離感が存在していた
もしそれを測るとするならば、恐らく30cmほど。それ以上縮まる事も、広がる事も無い
俺が引いた、境界線。絶対に越えてはいけない、壁
俺と修一は幼馴染みだ。親同士が仲良くて、家が隣同士で、物心つく前からずっと一緒に居た。それはもう、両親よりも長く一緒に居るんじゃないかと思うくらいには
小さい頃から お互いの部屋のベランダを行き来して遊んでたし、学校だって小、中、高、そして大学まで同じ所に通っている。最早、腐れ縁に近い
幼馴染みであり、友達であり、親友。隣に居るのが当たり前で、隣に居ないのなんて考えられない程、修一は俺にとって大きな存在だ
何年も、何十年も俺達はずっと一緒に居た。これから先も、恐らく離れる事は無いだろう
この感情を、修一が俺に向けてくる想いとは全く違うこの感情を、誰にも知られない様にひた隠しにして、抑え込んでいれば
きっと、ずっと一緒に居られる
”30cm”
これ以上離れれば生きていけない。これ以上近付けば友達で居られなくなる
手を伸ばせば届くけれど、俺からは伸ばせない
一歩足を踏み出せば触れられるけれど、俺の想いは抑え切れない
友達でいいんだ。お前の隣に居れるなら
それ以上は望まない。お前が側に居てくれるなら
苦くて、切ない、片想い
友達であり続けるには、俺達の間にこの距離感は必要不可欠
ーーだからお前からも、この領域に踏み込んでくるな
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