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「素直じゃないんだから…イライラしちゃうよ!」
シュウがボソッと言った。
「シュウ?」
「キョウカ、僕と行こう。君の好きな所、どこへでも連れて行ってあげるよ。オーストラリアでもイギリスでも、イタリアでも、そうだ!アマルフィで二人で暮らそうか。とっても景色もいいし、きっとキョウカは気に入るよ。」
「シュウ…あの、私…」
「もう、いいだろ。カインもキョウカも素直にならないから、僕だけはやりたいようにやらせてもらうよ。掴まって、キョウカ。」
シュウが私の腰を抱き寄せる。
や、待って…
カインが私の腕を引っ張る。
「シュウ、悪いがそれは認められん。」
「…なんで?」
シュウがカインを睨みつける。
「悪いな。」
「カイン、ズルいよ。本当はキョウカのそばにいたいのに、どうしてあの人間に譲ろうとするの?」
カインは口を噤む。
そんなカインをジッと見つめた。
カインが私といたいって思ってくれてる?
でも…私の魂は…
「人間はいつか死ぬからだ…。」
カインがボソッと呟く。
「キョウカはあの人間のそばにいたいと望んでいた。だからあの人間のそばにいればいい。あの人間が長生きした所で、せいぜい50年…。俺はその後でいい。」
驚きの表情でカインを見つめた。
「…コイツを偶然見つけた時は驚いた。本当の名前を聞くまで、この俺でさえ気づかなかった。もう見つからないとも思っていたが、やっと見つけたんだ。だからもう見失わない。50年位すぐだ。」
カインが私の方を向く。
「ここには他の悪魔が近寄れ無い様に方陣を敷いてある。だから魂も奪われる事はない。ここから出なければ安全だ。だからお前はアイツのところへ行け。アイツが死んだら俺様がお前を迎えに来てやる。」
呆然とカインの目を見つめる。
「カイン!!」
シュウが怒鳴る。
カインはシュウに頷くと翼を広げる。
チラリと私に視線を移すとハッとして私の首元に手を伸ばす。
そして私にくれたペンダントを引きちぎった。
無言のまま真っ黒な翼を広げて突風と共にカインは去って行った。
私を残して…
「キョウカ…僕はカインには敵わないよ。」
寂しそうな顔をしてシュウが私を抱きしめる。
「元気でね」
そう言い残しシュウも一瞬で消えてしまった。
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