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「もしかして知ってたんすか? 安西さんとはる姉のこと」
「はい」
マジか? それこそ、修羅場やんけ。
「じゃあ、そん時も殴り合い?」
訊き出したら止められなくて、オレはぐいぐい引き込まれてしまった。
「いえ。その時は……泣かれました」
「ウソやん!」
「彼女を失ったら生きてはいけないからって。どうしても結婚したいからって」
「ほんなら、安西さんはみっくんのために身引いたってことっすか?」
「彼のため、というよりは自分を戒めるためです」
3杯目の生ビールを飲み干し、彼はほんのり酒に染まった表情で言った。
「で、急いで女つくったんすか?」
「まさか。そんな簡単に恋人ができるほど器用な人間じゃないですから」
すっきり解けたはずの糸が再び絡まり出した。
「ちょっと待って。頭混乱してきた。ほんなら、はる姉が見た女の人は?」
「従姉です。恋人と別れたいので協力してほしいと嘘をつきました。それで彼女と約束があった日にわざと来てもらったんです」
突然おかしいとは思ってたけど、やっぱり芝居やったんかよー。
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