第1章

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昼になり、夕方になり、夜になったがマネージャーは現れなかった。 「どうしたのであろう、事故にでもあっていなければよいが」 その日、マネージャーが訪れることはなかった。 次の日も次の日もマネージャーが来ることはなかった。 もしかして、マネージャーがお金をとったのではと考えた。 しかし、携帯はおばあさんの手元にずっとあり、マネージャーに渡したことはないと言っていた。 では、なぜなくなったのかカグヤにはわからなかった。 何日か経つと特に気にすることもなくなり、平和に暮らしていた。 そんな平穏をやぶるように携帯にメールが届いた。 『追加証拠金を払ってください』 というような文面が届いた。 おばあさんはまた慌ててカグヤに画面を見せた。 「追加証拠金ってなんじゃろうか?」 「わらわに聞かれても…」 そこにおじいさんが登場し 「そんなときはネットで聞くのじゃ」と言って携帯を取り上げ操作しはじめた。 しばらく操作したおじいさんは顔を真っ青にして 「どうしよう、どうしよう」 と繰り返している。 何がなんだかわからない二人はおじいさんに説明を求めた。 「追加証拠金とは借金の催促なのじゃ」 と言った。 ●●●●●●●●● 実際の追加証拠金については各自でお調べください ●●●●●●●●● 「借金!」 息を合わせたかのように同時に叫んだ。 「借金の催促のメールなのか?」 カグヤが眉間にしわをよせておじいさんに問う。 神妙な顔つきで頷いた。 「借金の額は?」 ふるふると首を横に振って 「送られてきたメールに書いてある会社に電話して聞くのじゃ」 メールには 『Live Believe証券』 と書いていた。英語で書いてある、外国の会社かもしれない。 番号を押し、ワンコールで相手が出る。 「お電話ありがとうございます。こちらはLive Believe証券です」 つながった!そして日本語だ!安心したおじいさんは事の詳細をオペレーターのお姉さんに伝えた。 「約款にも記載しておりますが、FXの取引によっては元金を下回るおそれと、追加証拠金が発生した場合はお支払いいただくことになっておりますので…」 それを聞いて 「ワシはエフなんちゃろなんてやっとらん。責任者を出せ」と怒鳴りだした。 このままでは、ボケ老人が電話をかけてきて逆ギレしていると思われて適当にあしらわれると感じ、カグヤは電話を奪いとった。
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