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俺、加賀見純一の職業は冴えないゲーム企画補佐。
今日もくたびれたビルの7階にある、ゲーム会社に出勤する。
「おはよう、加賀見くん!」
背後から、高くて綺麗な声が響き、俺はすぐに振り返った。
「おはよう、山崎さん」
朝日を浴びた山崎柚子さんは、透き通るような肌のとてもすらりとした美人。
事務に勤めている誰もが憧れる女の子だ。
一緒にタイムカードを押すと入社する。
トイレに行く。
会議室に行く。
>デバック作業室へ行く。
今日は新作のゲームのデバック作業をしてる部屋に行く。
俺が部屋に入ると、そこにはテスト用のディスプレイが並び、その前に数名の人が画面と向かい合わせに座って、淡々とゲームをプレイしていた。
いいね、いいね、この雰囲気。俺はゲーム完成間際のこの空気に興奮し、思わず笑顔になる。
デバック作業というのは何をするかというと、要するにゲームがちゃんと動くかどうかのテストプレイである。
企画の人の思うとおりに、プログラマーの人が絵と、音声と、タイミングなどをちゃんとプログラミングしているか。
画面展開など間違えてないかを、チェックする。
希望通りの動きをしてくれなくて、途中で切れたりとか、他の場面に移動してしまう事があったり、繋ぎがおかしいなど、それらをバグと呼んでいる。
ゲームのバグという奴を発見する作業は一見退屈そうに見えて、とても重要な工程である。
これが上手く行かないと、どんなに綺麗なグラフックだったり、すばらしいシナリオのゲームだっだとしても、全てが台無しになるんだ。
プレイしている一人がうーんと唸った。
「やっぱり、ここちょっとシナリオの繋がりがおかしいんです、グッドエンドがバッドエンドに繋がってしまってます」
俺とソフトの男が、その様子を不安げに眺めた。
「そこの分岐ねー。まだダメか……」
ソフトの男がそう言いながら、ノートのメモを取り出し書き留める。
バグが出たらすぐに処理するので、こうしてメモるのだ。
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