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雨の匂いが微かに京介の首の後ろから香った。濃い茶色の毛先が肩から落ちる音と衣擦れの音が混ざり、抱き締められた心地よさが俺の四肢を勝手に動かし抱き締め返す
「伊織と離れとぅない」
そうやって呟きながらぎゅう、ともっと強く腕の中に
いつだって離れてる時のが多かった。京介が言ってた事は俺も、俺以外の人間も、きっと図星だ
俺と京介は「離れてる方が普通」で「いつも一緒にいる」方が普通じゃねぇような、日々が、…互いの人生を歩く事に対して良くて
「京介…」
同じものを同じ場所で撮るカメラマンは長く愛されねぇ
同じ人物から同じものを撮られるだけの俺もきっと、愛されねぇ
「俺だってお前とばっか居た毎日は、嫌じゃねぇんだ」
「…嘘やろ、どうせ」
「嘘だと思うならそれでいいから、…会いに行く」
「仕事でやろ。そんなん俺じゃなかったらどうするつもりやった?そうじゃなかったら俺と会う暇なんてなかったやろ」
「会えるきっかけになるもんだから俺も努力したって何で思わねぇ?自分だけだと思ってんの?」
「…」
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