第七話

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 不貞腐れたように新が言う。 「こともあろうか、望都には言えるのにね」 「……!」  やっぱり、新はこのことを怒っていた。 「す、すみません……っ」  ギュッと眉をハの字に垂らし、莉々子は謝った。 「怒ってるんじゃないよ。……いや、ちょっと怒っているけど、それは自分自身に、だ。莉々子の気持ちを聞き出せる技量がなかった」 「そんなっ、そんなことは……っ」 「じゃあなんで俺には言えないんだよ?」  新が唇を尖らせた。  ハンドルに腕を乗せ、ムスッとした顔は、今まで見てきたどの顔よりも魅力的だった。  お腹の底がきゅんと締め付けられる感覚を覚え、気づけばその頬に手を伸ばしていた。 「好き……すぎて、嫌われるのが怖かったんです……」  ――嗚呼、そうだったんだ。  新のことが好きすぎて、誰よりも、何よりも臆病になっていた。  それが分かった途端、胃につっかえていた何かが、すっと消えていくのを感じた。
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