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しかし、冴子さんがその思いを言葉にしてしまったら…。
おそらく楠田部長は、今以上に自分を責めたかも知れない。
だから彼女は一生その思いを口にしないと心に誓ったのだろう。
「…必ず…幸せを掴みます」
真っ直ぐに見つめながら誓った俺を、冴子さんは嬉しそうに笑って頷くと、再び駅弁に箸を進ませる。
「この駅弁、やっぱり美味しいよね」
その瞳の奥底に見え隠れする思いに気づいても、俺は決してそれを楠田部長に伝えることは出来ないだろう───。
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