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「カザンは、お兄さんはなんていってた?」  タツオもなぜか口のなかが乾いてしかたなかった。屋上から響く吹奏楽部のマーチは、最低の気分なのにひどく陽気だ。 「須佐乃男(すさのお)は東園寺(とうえんじ)家と五王(ごおう)重工が心血を注いでつくりあげた決戦兵器だ。なんとしても主操縦士は、東園寺から出さなければならない。五王はなりあがりの軍需成金だ。軍人としては信用ならない。ほかの派閥(はばつ)の人間にいいところだけさらわれる訳には絶対ならんといっていたの。タツオや菱川(ひしかわ)くんには絶対主役は渡せないって」  これだけの兵器の開発には何年もかかっていることだろう。計画段階からとすれば、タツオが生まれる前から発動していたのかもしれない。 「そうはいうけど、須佐乃男だって進駐軍の兵器だろ。日乃元(ひのもと)の国家予算で造られたものなら、国のもので東園寺家や五王重工の私物じゃないはずだ」  タツオは正論を吐いた。サイコがちらりとタツオの目を見る。闘いの女神の扮装(ふんそう)をしたサイコは不吉なほどきれいだった。
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