第五夜 家庭ゴミはご遠慮ください

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「次は、どんなふうにしたら面白いかしらね?」  洋酒の香りが鼻をくすぐる甘い菓子を食べながら、私は浮かんでくる笑みを止められずにいた。 『ゴミ捨ての犯人が分かったの!』と佐山さんから連絡が入ったのは、それから一週間程経ったある日の午後。  慌てて『仕事あがったら電話ちょうだい』とだけメールを打った。  彼女から携帯に電話が入ったのは、メールを送って二時間くらいしてからだった。 『ようやく誰だか分かったのよ!』  開口一番、興奮した様子の佐山さんが言う。 「さ、佐山さん、落ち着いて。詳しく教えてよ。私も気になってるんだから」  電話の向こうで、佐山さんが大きく息をしたのが聞こえた。落ち着くために深呼吸でもしたのだろう。  話をまとめると、こうだ。  不気味なゴミを捨て続ける不届者にいい加減しびれを切らした店長が、本部にかけ合って防犯カメラを設置したのだと言う。  数日ゴミ置き場を録画したところ、夜中に人目を気にするように大きなビニール袋を持ってくる人物の姿が映されていた。  店長と、事情を知る佐山さんが映像をチェックする。数回にわたって録画されていた人物は、店長も佐山さんも良く知っている相手だった。 『半年前まで、うちのお店に勤めていた人なのよ。辞めてからも、何度も買い物に来てたんだから。もう、何だかショックで』  聞けば、コンビニの仕事を辞めてすぐの頃、ご主人の不倫が判明し、その事に悩んで病んでしまったのだとか。やり場のない怒りを吐き出すために人形を破壊し、自宅近くのゴミ集積所にソレを捨てる訳にもいかず、コンビニに持ち込んでいたのだと語ったそうだ。 『お店としても迷惑だから、二度とこういう事はしないように、って約束して帰したのよ。知ってる相手だし、話を聞いたら警察とかに連絡するのもねぇ? 大体、罪になるのかどうかも分かんないし』  佐山さんの話を聞きながら、私は流しの下に隠したビニール袋の事を思った。そして、その袋の中に入っているモノの事を。  これではもう、そこのコンビニに捨てに行く訳には、いかないわね。どこかもっと、遠いお店を探さなきゃ。  まだまだ私の「ストレス発散」は続きそうだもの。こんな事で止める訳にはいかないの。  それにしても──。  と私は考える。
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