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彼に対する第一印象は、とにかく最悪で。
全然話さないし、いつも澄ました顔で席に座っているし、喋り掛ければ冷たい眼差しで刺すみたいに睨むし…。
ただ、常に落ち着いた冷静な雰囲気と、よく見れば端正な顔立ち、姿勢の良い歩き方は、自ずと目を引くものがあって。
同い年の子の中でも、浮くくらい大人っぽいっていうか、一際目立つ存在だったのは確か。
毎週水曜日と金曜日の図書当番。
初めは憂鬱でしかなかったそれが、だんだんと変化し始めるのに、それほど時間は掛からなかったと思う。
きっかけは、当番初日ー。
「あ、雨…。」
「……え?」
なんとかふたりきりという沈黙を乗り切って、締めの作業をしていた時、ふと窓の外を見るとポツポツと雨が落ちてきていた。
ただそれを見たままに声を発してしまい、あ、と思ったけれど、ひとり言だと思えばいいやと作業を再開しようした時だった。
私の隣で、同じく締めの作業をしていた彼が、ゆったりとした動きで顔を上げる。
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