10年前

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彼に対する第一印象は、とにかく最悪で。 全然話さないし、いつも澄ました顔で席に座っているし、喋り掛ければ冷たい眼差しで刺すみたいに睨むし…。 ただ、常に落ち着いた冷静な雰囲気と、よく見れば端正な顔立ち、姿勢の良い歩き方は、自ずと目を引くものがあって。 同い年の子の中でも、浮くくらい大人っぽいっていうか、一際目立つ存在だったのは確か。 毎週水曜日と金曜日の図書当番。 初めは憂鬱でしかなかったそれが、だんだんと変化し始めるのに、それほど時間は掛からなかったと思う。 きっかけは、当番初日ー。 「あ、雨…。」 「……え?」 なんとかふたりきりという沈黙を乗り切って、締めの作業をしていた時、ふと窓の外を見るとポツポツと雨が落ちてきていた。 ただそれを見たままに声を発してしまい、あ、と思ったけれど、ひとり言だと思えばいいやと作業を再開しようした時だった。 私の隣で、同じく締めの作業をしていた彼が、ゆったりとした動きで顔を上げる。
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