チキン

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暗い夜が明け、眩しい太陽が顔を出した。朝がきたのだ。 そんなとき、この辺りはどうしようもなく騒がしくなる。なかば高い声は、早朝の山中によく響く。 競うように大声を出す雄に目もくれず、わたしは外の景色を眺めていた。夜中に降った雨でできた水溜まりが、太陽の光を受けてとてもきれいに輝いていた。 こんなとき、なんていうか、生物的本能みたいな物にくすぐられて、外を走り回りたいと思うことがある。たかが日光でも、その光はわたしの目にひどく魅力的に映る。思えば、もう何年も、日の光を浴びていないのだ。 だけど、わたしにはそれが出来ない。 昔から、もうずっとずっと昔から、わたしはここから出られずにいるのだ。この『檻』から。
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