チキン

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わたしたちは、決して不満があるわけではない。ただ、心の何処かに巣くう虚しさを感じるのみだ。それがどうしてなのか、何なのか、わたしたちの小さな脳では理解できない。 相変わらず、外は晴天。本当は、こんな空は嫌いだ。青空は嫌みたらしいから。また朝がやってくればいい。わたしはそう思った。朝の雄鳥たちの叫びは、狭いわたしたちの代弁なのだ。 そのとき、檻の外に人間が現れた。機械的な眼でこちらを眺めると、わたしたちの目の前に餌をぶちまけて、去っていった。 どうして人間は、私たちに餌をくれるのだろうか? あんな何でもないような眼で? わたしには、人間という生物が理解できない。人間は他の檻で餌を撒いている。わたしは小さなくちばしで餌をつつきながら、人間の様子をじっと見つめていた。
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