30人が本棚に入れています
本棚に追加
茶道部の活動は水曜日と金曜日だから、残りの三日のあいだ、優はこうして眺めていた。
昔から人付き合いが得意ではなかった。高校に上がっても、幼なじみの友達一人しか、親友といえる人はいなかった。
だからこういう風に、誰もいない教室で静かに眺めているのが好きだった。性格が暗いわけではないけど、誰かの冷やかしを笑い飛ばせる度量が欲しいと思ったことは一度もなかった。
と、あの男子生徒がシュートを放つ。キーパーの手の間をすり抜け、吸い込まれるようにゴールへ入っていった。ド派手なガッツポーズ。快活そうな生徒だ。
名前は高澤祐一(たかざわ ゆういち)。サッカー部のエース。クラスも趣味も出身中学も違う。帰る方向は真逆。知っているのはそれくらいだった。
でも、それでもいい。優にとっては、こうして眺めていることがすべてだった。
最初のコメントを投稿しよう!