波兎

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「ふざけてなどいない。それともなにか、この場で殺されたいか?」 「親をゴミ呼ばわりするような野郎に殺される筋はねえよ。俺がこの場で殺してやる」 「お前があの組から警察組織に潜り込んでいたSということは知っていた。が、これほどあのゴミに懐いていたのは意外だった。面白いものだな、下層の人間というのは。本来の目的も忘れたと言うのか」 「……俺ぁ普通なのさ。お前ら上の人間が異常なのさ。人を人とも思わねえ、全てを自分の道具だと思っていやがる! 受けた恩は返すのが人間ってもんよ。俺はお前らの道具である前に、自分がすべきことを実行する」 「ゴミが」  逆手に刀を構えたまま飛びかかった出木の腕を止めた吉備は、そのまま力任せに腹を殴り、うずくまる男を足蹴にした。痛みのあまり悶絶した出木は、どうにもならない実力差に血の涙を滲ませていた。 「あ、あの人は、お、俺を初めて人間扱いしてくれたんだ。親も頼る人間もいない俺を、初めてお前は俺の子だと……、テメェはあの人の一番近くで、いつもあの人と一緒に過ごしていたはずなのに! なぜだ!? なぜそんなことができる!!?」
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