波兎

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「虚勢を張るのは勝手だが、私を後藤や西出と同じにしてくれるな。能力も脳力も足らんお前らは下層も下層、ただのお荷物であるお前たちを、見逃してやろうと言うのだぞ? 下級は下級らしく、大人しく現場の見張りをしているのがルール。余計な詮索はしないことだ」  落ちた日本刀を握った吉備が切っ先を闇夜に照らしてみせた。刃こぼれに湾曲した刀は手入れが悪く、指先を添わせた吉備が「道具もなっとらん」とそれを出木の腹に投げ捨てた。 「馬鹿は馬鹿なりに親の命じた仕事をする。それが親と子の繋がりというものだ。子が跳ねっ返ったところで、親は子を無碍にせぬものだ。今なら目を瞑ってやる」  しかしそれでも、カッと目を開けた出木は腹に乗った刀を掴み吉備へ振るった。当たるはずのない刀の刃は、冷たい空気だけを切り裂き、そのまま地面に突き刺さった。 「出木、お前はここで大人しく見ていろ。粗大ゴミを処分するのがいかに簡単か、しっかりと見届けるといい」  出木の真横を通り過ぎた吉備は、「待て!」と叫ぶ声に動きを止める。そして「まだなにか?」と聞き返した。 「つ、土屋のオヤジをこ、殺したのは、テメェ、テメェだよなァ!?」
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