プロローグ

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― 2000年 初夏  予てから危惧されたアンゴルモアの大王も影を潜め、人間が予測した器械の不具合も一段落した頃、人々は世界的なITバブルの波に浮かれていた。大手インターネットサービス会社は過去最高値を付け、連日メディアを賑わしている。新しく発売されたOSに人々は一喜一憂し、これまでの閉鎖された情報社会は変貌を遂げようとしていた。  政治への閉塞感とは裏腹に、一部の人間だけが得をする社会性に苦虫を噛み潰す連中も多い。中高年層は挙って若者を煽り、起業起業と囃し立て、嘘を垂れ流す。数年後には無くなっているであろう馬鹿げた宴に、人々は酔い痴れた。  インターネットの普及により、情報を得る媒体が増えたことも重なり、爆発的に増えていく情報は、また新たな格差を生む。巷では「情報弱者」などと比喩され、時代についていけない者は否応なく切り捨てられる。完全に二極化する世界が成立しつつあった。 「お、新しい情報出てる」  若者やビジネスマンを中心に携帯電話が急速に普及したこともあり、手軽なネットワーク環境で接続できる大手掲示板は飛ぶ鳥を落とす勢いで世間に普及していく。  経済情報、事件、コミュニティ情報から夜の下世話な物言に至るまで、そこには数限りない情報が乱立していた。
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