エピローグ

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 随分と内容を端折ったが大まかに言えばこんなものだ。一つ一つ説明していてはキリがないし、流れを教えた後で尋ねられたことについて話せばいい。  案の定、エディは怪訝な顔をして首を傾げる。 「濃霧の原因となる剣とは何だ?」 (実は白騎士様の剣が魔剣で魔物を活発化させていました、なんてことを話したら国中大騒ぎになりかねない、か。ちょっと脚色して後でピールに口裏合わせないとな)  うまく説明するために思案していると思われたのか、返答をせかしてこないエディ。おかげで落ち着いて少しばかり色を付けた報告を考えることができた。 「どうやら件の剣が魔の者を封印していたようでした。しかし長い年月をかけて封印が緩み、そこから漏れ出た悪意あるマナが霧となって形になり、魔物を扇動していたのではないかと。私はその剣を手に取り魔の者を撃破したという次第です」  英雄を魔の者と言っているようなものだが致し方ない。そもそもアレスに何の説明もなく斬りかかって来たのだからそれくらいの仕返しをしてもいいだろう。むしろ白騎士様の名誉を護ったとすら言えるのではないだろうか。  そんな自分勝手な自己完結を済ませるアレスは十二分に腹黒い。 「そうだったのか。して、その剣は?」  封印の剣。興味を示して当然と言える。アレスだって話に聞いただけならば見てみたいとは思うはずだ。そしてそれは国の物ともいえる。間違いなく城に没収され、なかったこととして伏せた、アレスに剣を譲るというシャールとのやり取りも無効になる。国の宝庫に安置されるか関の山だろう。あの剣を軽々と振り回せるのはアレスかイオンくらいしかこの城にはいない。だが、そんなことになれば困るのはアレスであり、延いては国の損失ともなる。アレス自身、自分をそこまで高く見積もりたくはないが、シャールとの戦闘や森での殲滅を考慮すればその事実から目を背けることはできはしない。  だからこそ、ピールには外せない用事ができた。 「はっ。その剣に付きましては私に預からせていただけるよう、セドリック神官へピール隊長に話を通していただいております。思い上がるような発言をご容赦していただきたいのですが、あの剣は並の剣よりも重く、城内でまともに扱えるとすれば私かイオン殿くらいかと思われます」
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