エピローグ

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 国の宝であろう剣を騎士見習い如きに私物とされては当然いい顔にはならない。眉間に皺を寄せてエディが反論する。 「ならば城内でしっかりと保管すべきだ。私が後でセドリック神官に上申しておく」 「はっ」  予想できた反応にアレスは素直に応じる。  本番はここからだ。 「報告は以上か。ならば下がれ。私は今調べ物で忙しい」 「であれば、助力させていただきましょう。何をお探しですか?」 「い、いい。貴様は遠征帰りで疲れているはずだ、今日は早く家に戻り――」  慌ててさっさと帰らせようとするエディだったが、アレスはその言葉に聞く耳を持たず、笑顔を浮かべ先んじて予想を述べる。 「白騎士シャールが、どのようにして死神ラモルを屠ったのか知りたいのですか?」 「っ……!」  面白いように動きを止める千人隊長。その白い両眼の視線を正面から受け止めながらアレスは一人で続ける。 「毒矢を受け止められ、術刻陣無しに巨大な炎の蛇を出す。そんな相手を正攻法で始末できるはずがない。ならばルミーラ人でありながら恐ろしい存在、死神を倒したシャールと同じ方法であれば殺せるのではないか。そうお考えに?」 「何を言っているんだ、貴様……」  小刻みに揺れる瞳孔は大きく開かれ、顔からは血の気が失せ、唇は真っ青に青ざめて震えている。それでも誤魔化そうとする態度が滑稽で、アレスは敢えて詰問せず続けた。 「ですが、無駄ですよ。白騎士シャールはエディ隊長とは比較にならない強者でしたし、何より私はその白騎士より強い。剣でも刻印術でも、私を殺すことは諦めたほうがいい。試みることは隊長の自由ですよ。勿論反撃には出させていただきますが。ただ」  笑顔を消し、目の前まで歩み寄ると眼前に自身の顔を突き出して、紙一枚程度の距離を残して揺れる双眸を睨みつけた。 「私を殺すために、ピール隊長や他の者を巻き込まないでいただきたい。今回は黙認しますが、次このようなことがあれば……。私に剣を向けておきながら、私の力量を見誤る程愚かではないと信じていますよ」  ガチガチと歯を鳴らし言葉すら発さないエディに溜息を吐き、一歩引いて姿勢を正すと再び笑顔を見せ、 「上官への非礼、お赦し下さい。それでは私はこれにて。ああ、そうだ」
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