プロローグ

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 長い長い石畳の上をコツコツ音を鳴らして歩き、正方形が突き抜けたような壁の高さと横幅が同じ通路を進む黒い姿の青年は、時折左右に点在する術灯にマナを与えて光を確保しながら、闇に沈む奥へと向かっていく。腰に提げた鞘は騎士達が常用している一般支給のロングソードを抱きかかえて主に連れ添っている。  時折右へと折れる通路は僅かに傾いており、前へ前へと向かうごとに下っているようだった。角ばった螺旋を描きながら地下へと向かう通路を下り続け、十五分は過ぎた頃にようやく開けた場所に辿り着く。 「真っ暗で何も見えないな。どこかに灯りがありそうだが……お」  部屋の入り口のすぐ横に四角い通路でも見かけた術灯が、通路から届く光を受け僅かに青年のコートの照り返しで見えた。マナを与えると小さな術灯が光を取り戻し、広い空間の一部が見えるようになるかと思いきや、術灯の上に続く別の術灯達が順繰りに点灯していく。どうやら核となっている印石が地続きとなっているらしい。ポッポッポッポッと四角く区切られた部屋を左右から挟むようにして対壁まで伸びて行き、部屋そのものをグルリと囲む形で青白い光が室内全てに光を行き渡らせた。  この部屋も通路と同じく高さと幅、加えて奥行きが同じ完全な立方体になっているらしく、壁の中央部を上下に区切って照らす術灯がカバーしきれていない部屋の天井と床の中央部は暗いままだ。しかしそれでも部屋の全容は見て取れる。角と角を結ぶ対角線、その直線を三つに分断するように直線ごとに二つ、合わせて四つのオブジェが配置されている。高さは三マータ程。光を受けて影をはっきりと残すそれは人が膝をついてしゃがんでいるようにも見える。部屋の中央に佇む主君に頭を垂れる姿はさながら何者かに仕える騎士のようだ。四つのオブジェの向こう、向かいの壁に四角い穴が見える。まだ奥があるということだ。 「いやーな予感がバリバリするけど、ここは敢えて真っ直ぐ直進かね」  青白く照らされる部屋の直進し、最寄りのオブジェの傍へとやって来る。弱い光と強い影で分かりづらいが、見れば見るほど人の形をしており、腰の辺りには剣を差しているように見える。腰の剣以外は左右対称なそれらを見過ごし、そのまま奥へと進み、  ズシリと、何か重い音がした。
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