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「え?
そんな話聞いていないわ」
私、裸だったのよ?
それでベッドで気付いたの。
何もないわけない。
そんなのは嘘に決まってる。
あんなことがあったから達也さんにはもう会えないと思ったの。
だから家を出たのよ?
「信じられないかもしれないけど、あの男の顔は嘘を言っていない。それだけは確かだ。
あの男は何もかも失くして、家族からも見捨てられ娘さんにも何年も会わせてはもらえなくて、結婚式にも呼ばれなくて……
そんなあの男から僕たちを見ると、幸せそうで許せなかったらしい。
だから華を傷つけて憂さ晴らししたいととっさに思ったんだと言ってた。
だけど、イザとなると華が娘さんに見えて、手を出せなかったと……
許してやれとは言わないけれど、
本当に怖い想いをしたと解っているけど、
もう、忘れて欲しい。
そして、新しい未来を歩いてほしい」
結局・・・
達也さんは私を遠ざけるの?
あの事件のことを忘れることは出来ないけれど、でも、とっくに立ち直ってる。
あんな事で自分の人生にトラウマを抱えてしまうなんて、堪ったもんじゃない。
昔……
付き合ってた元カレにストーカー紛いの事をされて似たような経験をしたことがある。
人には言えないけど。
その時に決めたんだ。
こんな非条理な事に巻き込まれて世の中が嫌になるとか、怖くて外に出られないとか、
きっとそんなに弱い人間じゃない。私は。
図太いのか、あんな事はそんなに大事じゃないのか。
自分でもよく解らないけど。
でも、達也さんはそう思ってはいないようで……
朔ちゃんも知っていたのか。
今の達也さんのはなし。
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