相変わらずな僕ら

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「おはようございます」 ほんわりした声と口調で挨拶をしたのは、特務捜査課の新人、葉村小太郎(はむらこたろう)だ。 人畜無害、のほほんとした素直すぎる性格は、時には色々な厄介事に巻き込んでくれちゃったりする事も多々あるが、特務捜査課の癒しとして大活躍をしている。 その艶々で柔らかそうな頬っぺたを、いつか思い切り引っ張ってやろうと画策している事は、俺の中だけでの機密事項だ。 「おはよう」 挨拶を返した俺に、葉村はへにゃりと笑って小さく手を振ってくる。 うん、俺、先輩。 お前、後輩。 そんな事を心の中で呟きながら、恐らく悪気なんて一ミリも無いであろう葉村に、にこやかに手を振り返す。 うん、あれも尊敬とか、親しみだとかの類いでの行動だ。 きっと、そうに違いない。 先輩を先輩とも思っていない、そんな蔑みからくる行動ではない筈だ、うん。 そう言い聞かせながら葉村の前を通り過ぎ、自分のデスクへと向かう途中で、「相川」、と西田課長に呼ばれた。 特務捜査課の課長である西田克久(にしだかつひさ)課長は、長いものには自ら巻かれろ精神を携えた、俺たちの上司だ。 「はい」 返事をして西田課長のデスクへと向かうと、課長は眼鏡を指で押し上げてから、鋭い目で俺を見上げた。 「相川、何か忘れていないか?」 「え? ……何か、忘れて…マスデショウカ?」
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