婚約

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誰もが甘い結婚の夢を叶えられるとは限らない。 「ごめんね、猫ちゃん」 立ち上がり、謝りながらそっとカレンダーを外した。 涙で霞んだ目で、何もなくなった壁にぽつんと開いた画鋲の穴を見つめる。 黒木を愛せなかったら? 黒木が私を愛してくれなかったら? 今の私には、結婚は未知のものが潜む深い淵のようにも思えた。 そこに身を沈めてしまえば、 恋する苦しさを忘れられるだろうか。 それとも、 何かが生まれるのだろうか。 いずれにしても、 これでもう、賽は投げられた。 愛せないなら愛してるふりを貫けばいい。 愛してもらえなければ、多くを望まなければいい。 そうして目を閉じて身を任せていれば、いつかきっと楽になれるはずだから──。 (第二話へ)
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