16 それは幸せの通過点

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「とりあえず、」 言いながら、玄関にある靴の入った段ボールを開けて、俺が開けた靴箱の扉、開いてる所へしまいこむ。 開いた段ボールは俺が畳んで、リビングに入ったところで奏はまたくすくすと肩を揺らした。 重なるダンボールは今日から奏が一緒だという証拠。 少しずつ開けて行くその開いた箱はどんどん俺が畳んでいき。 「折角シンプルでかっこいい部屋だったのに、」 リビングに置く物を全て出し終わると、奏は苦笑を洩らす。 「もう少し物減らして来ればよかったね」 そんなに言うほど奏が持ってきたものも多くねぇから。 「俺はこの状況の方がいい」 「そう?」 「あぁ。俺しかいないときは殺風景だったからな。あの頃見慣れた物なんかもあると気持ちが落ち着く」 俺の言葉に、奏は少し目を伏せた。 きっと、あの頃を思い出してるんだろう。 俺もそうだ。 あの時は、俺一人が奏の前に現れたが、これからは一緒に“生活”していく。 「この部屋に早く慣れろよ?」 「ん、」 声よりも、コクリと首を縦に振って。 全てのものを出し終えた今、奏が持ってきたマグカップでコーヒーを飲む。
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