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「とりあえず、」
言いながら、玄関にある靴の入った段ボールを開けて、俺が開けた靴箱の扉、開いてる所へしまいこむ。
開いた段ボールは俺が畳んで、リビングに入ったところで奏はまたくすくすと肩を揺らした。
重なるダンボールは今日から奏が一緒だという証拠。
少しずつ開けて行くその開いた箱はどんどん俺が畳んでいき。
「折角シンプルでかっこいい部屋だったのに、」
リビングに置く物を全て出し終わると、奏は苦笑を洩らす。
「もう少し物減らして来ればよかったね」
そんなに言うほど奏が持ってきたものも多くねぇから。
「俺はこの状況の方がいい」
「そう?」
「あぁ。俺しかいないときは殺風景だったからな。あの頃見慣れた物なんかもあると気持ちが落ち着く」
俺の言葉に、奏は少し目を伏せた。
きっと、あの頃を思い出してるんだろう。
俺もそうだ。
あの時は、俺一人が奏の前に現れたが、これからは一緒に“生活”していく。
「この部屋に早く慣れろよ?」
「ん、」
声よりも、コクリと首を縦に振って。
全てのものを出し終えた今、奏が持ってきたマグカップでコーヒーを飲む。
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