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その後も何日も熱は下がらず、夢と現つの間を行ったり来たりしていた。 あとで使用人から聞いた話によると、拗らせた風邪のせいで肺炎を起こしかけていて、応診に来ていた先生には入院を勧められていたという。 しかし叔母は、何んだかんだと理由を付け、頑としてそれを受け入れなかったらしい。 叔母は、七瀬の直系の子どもとして残された自分に、死んでほしかったのかも知れない。 今考えると、璃桜の為を装った言葉も裏に隠された真意にゾッとする。 やっと熱が下がった時には、璃桜の周りの世界は一変していた。 両親の葬儀も、いくら小さかったとはいえ、娘の璃桜には何も知らされずに既に終えていた。 喪主を務めた叔父は、父の代わりに実質上の七瀬の権力者となっており、目覚めた璃桜の手を握っていたのは《 樹 》だった。 そして、大好きだった少年の居た痕跡は跡形も無く消された。それは熱を出している時に見た夢物語にされ、父と母を一度に亡くした心の隙をつきながら、何度も記憶は塗り替えられていった。 いや、信じる方が楽だったのかもしれない。 愛する人達が全て居なくなってしまうことは、幼い璃桜には受け止めきれなかったのかもしれない。 だけど、それでも心のどこかでは違うとは感じていた。 ……その証拠に、璃桜は樹のことを最期まで本当には愛せなかった。
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