第1章

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さわさわと心地いい風が頬を撫ぜる。 少し、肌寒くなってきたから窓を閉めようと立ち上がり窓に近付くと蝉の鳴き声がより一層近く聞こえた。 「どこにいるのかね。」 どこを見ても、セミの姿は見えない。 そう思いつぶやくと、遠くで誰かが自分の名を呼んでいる声が耳に入った。 声からして、多分先生だろう。 「今行きます」 何かしたっけ。と思いながらぱちり、と窓を閉めて、声の聞こえた職員室の方へ向かう。 蝉の声は、どこかへ消えてしまっていた。 「お願いします!」 まだ誰も居ない武道場へ言うと、部室の鍵をあけて荷物をロッカーに放り込む。 「窓、開けなきゃ」 夏場は暑く、冬は寒い。 それが我が校の武道場だ。 「っわ、」 窓を開けるとぶわっと生暖かい風が蒸し暑い武道場へと流れ込む。 「…風があるだけマシか。」 苦笑を漏らすと入口の方からガヤガヤと賑やかな声が聞こえてきた。 「あ、先輩が来た…」 今日も厳しい稽古が始まる。
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