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大手のデパートで夕方に近い時間ともあり、人の混み方が異常な程だ。
その中を慣れた様子で間を抜けて行き、居るモノをどんどん籠に入れて行く広樹。僕は広樹に付いていくのがやっとと言う感じになる。
そして、一通りセール品を買い終えたら会計をして荷物をエコバックに入れて行く。
これで終わりと思っていたのだけれど、広樹が別フロアへ地味に買い出しを持ちながら向かった。
「本当なら食品は後からだけど、良いの無くなっちゃうとね」と苦笑いしながら言う広樹に付いていき、数分。
様々な弁当箱が置かれた場所に着く。
混乱する僕に、広樹は手に取ってみる行動をする。
「どれがいいかな」
「広樹、なんで?え?」
「上司命令だから逆らえない」
嘘だ。
楽しんでいる。
「僕、大丈夫だよ。お金もないし」
「ハイジに払わせたら怒られるっつの。ちゃんと予算は貰って来たよ」
「でも。…っ、また無くなっちゃうし」
「そんな事、二人は考えてないよ。無くなるから買わない。盗まれるなら買った物食べろ。そんな事言う人達じゃない。ハイジが諦めても、テツさん達は買い替えてあげる事を諦めたりしない」
弁当箱を見ながら広樹は言う。
テツ達の気持ちを、僕への心配を、僕の欲しいものを。
微笑みながら軽く言っているけれど、とても重く温かい物に感じた。
「ハイジ、洗うの面倒とかある?」
「…ない」
「じゃあ、これにしよう。テツさんのリクも貰ってきたからスープとかも入れられるセットの奴。保温機能つき」
「ははっ、そんなドヤ顔するようなものじゃないよ」
「そうかなぁ。あ、でもこれじゃ足りないか?」
「食べてみないとわかんないよ」
「確かに」
広樹の笑顔が温かいし優しい。
何度でも救われる。
考えている事を馬鹿馬鹿しくしてくれる。
何度でもこうして同じ感情は湧き上がってくる。
広樹となら笑えている気がする。そう思う。
「あの、広樹」
「なに?」
「お願いがあるんだ」
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