第1章

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大手のデパートで夕方に近い時間ともあり、人の混み方が異常な程だ。 その中を慣れた様子で間を抜けて行き、居るモノをどんどん籠に入れて行く広樹。僕は広樹に付いていくのがやっとと言う感じになる。 そして、一通りセール品を買い終えたら会計をして荷物をエコバックに入れて行く。 これで終わりと思っていたのだけれど、広樹が別フロアへ地味に買い出しを持ちながら向かった。 「本当なら食品は後からだけど、良いの無くなっちゃうとね」と苦笑いしながら言う広樹に付いていき、数分。 様々な弁当箱が置かれた場所に着く。 混乱する僕に、広樹は手に取ってみる行動をする。 「どれがいいかな」 「広樹、なんで?え?」 「上司命令だから逆らえない」 嘘だ。 楽しんでいる。 「僕、大丈夫だよ。お金もないし」 「ハイジに払わせたら怒られるっつの。ちゃんと予算は貰って来たよ」 「でも。…っ、また無くなっちゃうし」 「そんな事、二人は考えてないよ。無くなるから買わない。盗まれるなら買った物食べろ。そんな事言う人達じゃない。ハイジが諦めても、テツさん達は買い替えてあげる事を諦めたりしない」 弁当箱を見ながら広樹は言う。 テツ達の気持ちを、僕への心配を、僕の欲しいものを。 微笑みながら軽く言っているけれど、とても重く温かい物に感じた。 「ハイジ、洗うの面倒とかある?」 「…ない」 「じゃあ、これにしよう。テツさんのリクも貰ってきたからスープとかも入れられるセットの奴。保温機能つき」 「ははっ、そんなドヤ顔するようなものじゃないよ」 「そうかなぁ。あ、でもこれじゃ足りないか?」 「食べてみないとわかんないよ」 「確かに」 広樹の笑顔が温かいし優しい。 何度でも救われる。 考えている事を馬鹿馬鹿しくしてくれる。 何度でもこうして同じ感情は湧き上がってくる。 広樹となら笑えている気がする。そう思う。 「あの、広樹」 「なに?」 「お願いがあるんだ」
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