桂川の大蛇の恋

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 松尾橋のすぐそこまで大きな、大きな水の塊が、やってきました。 風は強く吹き、川の色は、黄土色をし 川の底が全く見えません。 大きな音と共にすべてを飲み込んでしまうほどの勢いです。 防波堤を突き破りそうなほどの川の水の勢いに人々は恐れをなしています。 そして、これは、桂川の大蛇が怒っているんだと口々に言い合いました。 いつもは、透き通った川の色をして川底で泳いでいる魚を見るのに、今は、 その魚もどこへ行ったやら、自然の表情の変化には、驚くばかりです。 人々は無力を思い知らされるのです。また、人々は人間の心を飲み込んでしまう。 大いなる力を感じずにはいられません。 どんなに人間があがいたところで、どうすることもできないのです。 川の中に住んでいる、大蛇の怒りが治まるのを待つしかすべはないのです。 一人の女お福が、松尾橋の上から、橋の下を眺めていました。 増水している、川を眺めていました。
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