第21話 【嘘と誠と幸せと】

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雪菜さんが背負う罪。 香川さんが背負う罪。 そして、先生が背負う罪。 【恋愛】という感情の中で、それぞれ掛け違えた糸が複雑に絡み合い、その糸はやがてイバラの棘となり身体に食い込んだまま離れない。 ある日、突然と愛情が憎しみに姿を変えることはあっても、憎しみを愛情に変えることは難しい。 恋愛は人間に最高級の幸福感をもたらし、時に人間の最も卑劣な本性を引きずり出す。 香川さんの言葉の中に隠された真実。 私はきっと、未だ知るべき真実を知らないまま彷徨っている。 ……私たちの関係は終わったのだと、先生は本当に香川さんに言ったのだろうか。 もし本当なら、どんな状況であの人とそんな話をしたの? どうしてあの人にそんな事を言ったの?言う必要があるの? 先生が私との別れを決断していたとしても、なぜ何も言わずに私を避けるのかが分からない。 それに、ナースステーションで見た彼のあの眼差し……あの表情の意味はなに?私に何を言おうとしてあんな悲しげな眼をしたの? もしかして、あなたの中で本当に終止符を打たれてしまったの? 私が深津さんを選んだって、どういう事なの? どうして、杏奈さんまで私を避けるの? どうして? どうして? こんなの嫌だ。受け入れられる訳が無い。 こんな形で終わりを迎えるなんて、信じられない。 信じたくない。 あまりに唐突で否定ばかりが頭を巡り、悲しみを感じる間も無く茫然として、不思議と涙も出て来ない。 心に燻るのはとりとめの無い違和感。 私の時計の針はあの日のまま静止しているのに、 どこかで私の知らない私の時間が、独り歩きしているような気がする――――。 「……」 「……おいっ!安藤っ!」 「……」 「おいっ!聞いてんのかよっ。お――――いっ!安藤――っ!」 物思いに耽る私の耳に、大きな声が無理やり捻じ込まれた。
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