悲愴

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「ハァ……くそッ、頭も背中もいってえ!」 息を切らして、 スマホのナビに誘導されながら、とにかくY市の方へと走り出す。 赤々と恐ろしい炎を揺らすも、静かだった後方が、 いつの間にか消防隊と警察と人だかりで賑やかになっていた。 そうだ。 びびることはない。 俺が、あの女と一緒だったっていうのを知ってるのは、 雲隠れしたい研究所の人間だけだ。 …………そもそも、この媚薬だって、 水城と同じような男に飲ませたら、結果わかんじゃねぇの? わざわざ、Y市まで、 会わせて貰えるかどうかもわかんない隔離センターまで、行く必要あるか? 「………………」 ″ お願い 、ユウを助けて ″ 俺の中の僅かな良心が、 ズキズキする体を何とか動かしている、 その止まりそうな体の横で、 高級そうな車のエンジンが聞こえてきた。 「すごい爆音がしたわね。 まさか、あなたが乗っていた車だったの?」 赤いスポーツカーの窓から 篠崎美和が顔を出していた。
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