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「アタシがオネエになったいきさつなんだけど、社内の古株たちの間では会長の娘に大失恋したからオネエになったとか、会長の娘から身を引く代わりに今の部長職を貰ったとか、好き勝手に言われてるけど実際は違うから」
「あ……」
その噂は確かに聞いた記憶がある。
だけどもうその時点で私は楠田部長の優しさにどっぷりと浸かっていたし、そんな噂なんて気にもしてなかったから。
「アタシは葉月ちゃんに言ったように生まれつきのオネエだし、これからも女を好きになることなんてない。
だけど周りの人間は面白おかしく物事を言うから葉月ちゃんや映見ちゃんたちも時にはアタシのことで不愉快な思いをすることがあるかもしれないけど、その時は許してやってね」
「はい……私も映見も全然そういうのは大丈夫ですよ」
分かってはいても、楠田部長の言葉が私の胸をグサリと突き刺していた。
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