オトナガイ

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「“オトナガイ”?」 オフィスの昼下がり、後輩たちと社員食堂で雑談中のこと。 「そうなんです。ソレを捕まえられたら、どんな欲しいものでも手に入るって」 「それって“幸運の女神”?」 “幸運の女神”は聞いた事がある。 確か前髪はあるけれど、後ろはツルッ禿げの女神様。 恐ろしくすばしっこい上に、取り逃がした後姿は滑ってどうしても捕まえられないとか。 「違ういますよ。女神様は幸運をくれて、“オトナガイ”は欲しいものを買えるんです。 女神様はその身体の大きさと、幸運の大きさが比例するらしいんです。で、“オトナガイ”はですね・・・」 女神様は、シルバニアなうさぎサイズの3㎝くらいのものから、ダンプカー並みに大きなものまでいるらしい。 「支払う代償の大きさで、買えるものが決まるらしいんですよ」 「えーっ。代償とか怖いんですけど」 一緒に聞いてた別の後輩が、嫌そうに首を左右に振る。 「タダより怖いものは無いってことでしょ」 その時はそう言って笑ったのだけど。 ♪幸せ~つかめ~ラッタッタラッタッタ♪ その日の帰り、夜道で可愛い歌声がした。
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