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ひとたび目を見開けばそこは一面黄土色。
暗闇から脱したことによる安堵感でボケッとしていたからか目の前の光景に頭がついていかず、そのまま頭から落下した。というか勢いがありすぎたのか身体の半分くらい土の中に埋もれちゃったよ。あれ、窒息死しちゃわないかな。
「いってぇぇぇっ!!」
何これ頭から落ちたら普通人間なら死んじゃうよね?
めっちゃ痛いんだけど!
めっちゃ痛いんだけど!!
何故か二度言いました。
「あはははっ!盛大に頭から落ちたな。よく無事だったなお前」
「落下途中で手を放す爽が悪いです。それにしてもよく無傷でいられますね。人間なら死んでもおかしくないというのに……不思議なこともあるもんです」
「お二方、冷静に呑気に喋ってないで土の中に埋まってる俺を助けて下さいませんかね」
土中に埋まってる俺のすぐ横には冷静にこちらをじっと見つめる心配のカケラもなさそうな白狐がおり、少し離れた場所に嵐武様が俺を指差して笑ってやがった。
結局二人に助けてもらうことなく自力で這い上がった可哀想な俺。
「で、どっち向かえば良いんだろ?全然分かんない」
どこを見ても草木。色鮮やかな緑が辺りに広がってる。道らしき道はなく、そこらにはリスや兎といった可愛い小動物がいきなりこの地に降り立った俺らをガン見している。
ごめんね、驚かしちゃったね。
「ここから北に真っ直ぐだ。ひたすら歩けば分かる」
そう言ってその方角を指差す嵐武様。
てか、え?ひたすら歩けば……って、そんな長い距離なの?近くって言ってたよね?近くなんだよね?入学式に汗だくで出席とかやだよ俺。
「向こうについたらとりあえず理事長室に向かえ。寮の自分の部屋の鍵もらったりするかんな。入学式は1週間前だったから授業は午後もあるんじゃねぇかな?」
まさかの入学式終わってた!
「まあ頑張れよ。………色んな意味で」
ぼそっと言ってるけど聞こえてんぞ。
色んな意味って何?ねぇ、色んな意味って何!?
「………爽」
嵐武様の意味ありげな言動に頭の中?状態の俺に呼び掛けたのは白狐だった。
何だろうと思い横を向くと、いつになく真剣な白狐の顔がそこにあった。
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