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「だから、死んでください」
窓から差し込む夕陽は、彼女に潜む影を際だ立たせるかのように、涙声とは対照的な彼女の笑顔を照らした。
僕たちは今、死の狭間にいる。
僕と彼女は同棲中に強盗が入り、二人ともナイフで刺された。しかし、僕は刺されたことどころか、彼女のこと、自分のことすら覚えていなかった。
ここから抜け出すためにはもう一度死ぬしかない。しかし、この狭間を維持するには少なくとも一人はここに残らなければならない。
「僕が残るよ。君を一人になんて出来ない」
その場にうずくまり泣きながら、大きく首を横に振る彼女をそっと抱き締めた。
「なら、ずっと二人でいよう」
そう言いながら、僕は彼女が顔を上げた瞬間に首を締め上げるつもりだ。ごめんね、嘘をついてーー
「ごめんなさい」
その瞬間、腹部に燃えるような熱を感じた。見覚えのあるナイフが僕を貫いている。
「二度も貴方を殺すことになるなんて」
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