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千尋さんのガイド通りに腰をおろせばふわりとした浮遊感。
「わっ」
みるみる足が地上から浮かび上がり、下には滑っている人と雪景色だけが広がる。なだらかに上がっていくリフトを緊張した顔できょろきょろと見回していると、前に乗っていた2人が後ろを向きながら私の顔を見ておかしそうに笑っている。
1番短いリフトから何とか緊急停止してもらうことなく降りてボードをセットする。
「私がシュプールを描きますから、それに倣って降りてきてください」
「はい」
千尋さんがそう言ってかなりスピードを落としながらゆっくりと滑り出す。
あれから立つことは出来るようになった、転ぶことにもだいぶ慣れた。ターンすることは相変わらず苦手でよく逆エッジがかかってしまうけれど、全然滑れなかった初日に比べたら板にも慣れてきた。
(それに)
ここまで教えてくれたみんなに少しでも滑れるところを見せたい。
後ろからいざというときのストッパー役を買ってくれた斗真くんと正親さんの方を振り返る。
「が、頑張ってきます!先生!」
思い切って傾斜を滑り出す。
後ろでは2人が笑いながら同時に行って来いと言ってくれた。
今年はいっぱい転んで、来年は1日目からみんなと滑りたい。
後ろに行きがちだった重心が前を向いた気がした。
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